配信で使うAG03以外のオーディオインターフェイス比較おすすめ【MOTU vs AUDIENT vs SSL】

YAMAHA AG03及びAG03mkIIは言わずと知れた配信用途のオーディオインターフェイスです。

ストリーマーのSPYGEAさんがYAMAHAのアンバサダーになって紹介してましたね。ZG01というゲーム配信に特化したものも発売されました。

主がAG03を数年使って思ったことは、便利だけど音がそこまで良くないということです。
特にイヤホンを繋いでモニターするときのホワイトノイズが気になります。
オーディオインターフェイスと言っても、ミキサーにオーディオインターフェイス機能が付いているようなものなので、アナログミキサー部分は音の劣化が激しく、単体のミキサーでさえかなり良いものじゃないとホワイトノイズが出やすいです。

AD/DAも1チップのCODECです。

初めて配信する方には安いし使いやすいしおすすめできます

しかし、配信にも慣れてきたしちょっと環境をグレードアップしたい、配信音声をできる限り綺麗にしたい、ゲーム音声も良くしたい、という方がAG03を選んだり、AG06mkIIに乗り換えるというような選択はおすすめできません。
品薄のため転売価格で高く売られているのもマイナスポイントですね。

個人的にはゲーミングDACもおすすめしません。ほとんどの物がコスパ最悪だからです。
部屋の雰囲気だとかモチベだとか、そういう所を重視しないのであれば楽器カテゴリーの物がおすすめです。

そうなると必然的にミキサー機能の付いていないオーディオインターフェイスで3万円~5万円あたりがターゲットになると思います。予算に上限が無い方はRMEを買いましょう!

このBabyface Pro FSはRMEの中で最も安い機種です。

何を比較して選ぶか

いくつか種類がある中で何を比較してオーディオインターフェイスを選ぶかですが

着目点
  • DAコンバータ
  • ADコンバータ
  • オペアンプ、キャパシタ
  • 測定値

今回はこの4点を基準にします。
もちろんこの部分だけですべてが決まるわけではないのですが、心臓部であることは間違いありません。

公式に部品が公表されていることはあまりなく、製造時期によって変更されたりもするのでご了承ください。

聴いた感じの好みの部分は人によって変わるので、必要以上に深入りしないようにします。

また基本的に同じグレードの製品でもチャンネル数が増えれば価格も上がるという認識で良いと思います。

オーディオインターフェイスの候補

今回比較する製品は、2万円未満の有象無象と、10万円以上クラスの間に存在するグレードになります。
それでいて2万円未満の製品とは明確に音の差が出てきますし、10万円クラスの物と遜色ないこともあるのでお勧めできる価格帯です。

実は2万円以上~5万円未満という価格帯の製品はあまり多くありません。

有力候補
  • MOTU M2、M4
  • AUDIENT iD4mk2、iD14mk2
  • Solid State Logic SSL2、SSL2+

正直この3つのメーカー、6機種(チャンネル数の違い)から選ぶだけで大丈夫だと思います。

メーカー公表のスペックや機能は省きます。記事の最後にそれらをまとめたサイトへのリンクが貼ってあるので必要な方は見に行ってみてください。


それではさっそく。

MOTU(Mark of the Unicorn)

MOTUは1981年に設立されたアメリカ マサチューセッツ州ケンブリッジに本拠を置くメーカーです。
ハードウェアだけではなく、Digital PerformerというDAWの老舗でもあります。

Mシリーズが発売され、音質の良さと価格の安さのため世界的に品切れを起こし、フリマサイトで高額転売されるほどの人気があります。

M2

  • DAC … ◎ESS ES9026PRO(ES9016Sから変更)
  • ADC … ESS ES9820(AKM5552から変更)
  • オペアンプ … 主にOPA1678を使用し、ヘッドホンアンプ部にOPA1688、ラインINにTHS4521
  • キャパシタ … ◎日本製(Nichicon FW、Panasonic FT)
  • マイクプリアンプゲイン … 60dB
  • ループバック … ○
  • バランス出力 … ◎

M4

  • DAC … ◎ESS ES9026PRO(ES9016Sから変更)
  • ADC … ESS ES9840(AK5554から変更)
  • オペアンプ … 主にOPA1678を使用し、ヘッドホンアンプ部にOPA1688、ラインINにTHS4521
  • キャパシタ … ◎日本製(Nichicon FW、Panasonic FT)
  • マイクプリアンプゲイン … 60dB
  • ループバック … ○
  • バランス出力 … ◎

現行のDACチップで最高峰と言われているものは、旭化成の火災の影響(AK4499の供給停止)を考慮するとESS社ES9038PROというものになります。MOTU MシリーズにはES9026PROというES9038PROの2つ下のグレードのものが使われています。
下位グレードと言っても本来はこの価格帯のインターフェイスに搭載されないような高性能なもので、実際にMOTUの上位機種(10万円)であるUltraLite mk5にも同じものが使われています。AVアンプであれば20万円クラスのものにも使用されています。これは結構凄いことです。

出力される音は「高解像度」「かっちり」「モニター的」と言われていて、FPSゲームに向いていると思います。またボリュームを上げた時にAG03にあったようなホワイトノイズが無くなりました。

マイク入力に関わるADコンバータはM4とM2でch数の違いはあるもののグレードは同じです。
しかし入力部分の測定値に差が出ています。
入力の品質を重視する場合はM4を選択する方が良いでしょう。

引用元 https://www.audiosciencereview.com/forum/index.php?threads/motu-m2-review-audio-interface.19911/

MOTU M2、M4にはSSL2にあるエンハンサーLegacy 4Kモードのようなエフェクト機能はありません。
ですがM4に限って言えばSSL2にはないライン入力を備えているので、単品のマイクプリアンプやミキサーを繋げることができます。将来的に拡張していくのであればそのようなエフェクト機能も問題ないと思います。

AUDIENT

AUDIENTは1997年に設立されたイギリス ハンプシャー州ヘリヤードに本拠を置くメーカーです。
アビーロードスタジオ等、著名なスタジオに導入されるコンソールを作っています。

メーカーが公開しているスペックはこの価格帯で最高部類です。

iD4mkII

  • DAC … Cirrus Logic CS43199(CS43198から変更、省電力版?)
  • ADC … ◎ESS ES9822QPRO(ESS最新型ADC、AKM AK5572から変更)
  • オペアンプ … 主にOPA1678を使用
  • キャパシタ … ◎日本製
  • マイクプリアンプゲイン … 58dB
  • ループバック … ○
  • バランス出力 … △疑似バランス

iD14mkII

  • DAC … Cirrus Logic CS43199(CS43198から変更、省電力版?)
  • ADC … ◎ESS ES9842QPRO(ESS最新型ADC、AKM AK5574から変更)
  • オペアンプ … 主にOPA1678を使用
  • キャパシタ … ◎日本製
  • マイクプリアンプゲイン … 58dB
  • ループバック … ○
  • バランス出力 … △疑似バランス

マイクプリアンプにプロスタジオ向けコンソールASP8024 Heritage Edition(数百万円の物)と同じディスクリート Class-A 回路を採用しています。これは3機種中唯一です。さらに両機種ともADコンバータに他社より上位のチップであるES9822,ES9842を使用しており、入力のノイズが低く抑えられています。

ギターの入力にもJFETが使われているのでキレがある音が出るでしょう。

出力される音は「温かみのある」「広がりのある」と言われていて、MOTUとは対称的です。
MOTUの音より好きだという人も多いです。ハイボルテージモード(USB3.0接続)を有効にすると音質が上がります。

拡張用のADAT入力を備えているので入力数を大幅に増やすことが可能ですが、別途高額な機材が必要になってくるので今回は割愛します。

ヘッドホンジャックの出力インピーダンスが高いため、一般的な16Ω、32Ωのイヤホンを接続した場合、低音がカットされて聞こえることがあります。一般的なイヤホンを接続する方は注意した方が良いでしょう。

またサンプリングレート96kHzでノイズが発生するバグがあり(ファームフェアで修正可能とされている)、Windows版のドライバーソフトの評判もあまり良くなく、AMDチップセットのファームウェアバージョンによって相性があったりなど、安定性に懸念があるかもしれません。

SSL(Solid State Logic)

SSLは1969年に設立されたイギリス オックスフォードに本拠を置くメーカーです。
世界の名だたるスタジオに導入されているコンソールを作っています。

SSL2

  • AD/DAC … △AKM AK4621EF CODEC(現在は不明。旭化成の火災の影響でESS社に変更の可能性有り)
  • オペアンプ … NJM4556A、NJM8065、NJM8068、NJM8080、OPA1678を各所に使用
  • キャパシタ … ◎日本製(Nichicon、Panasonic)3300μFの大型コンデンサを搭載
  • マイクプリアンプゲイン … 62dB
  • ループバック … ×
  • バランス出力 … ◎

SSL2+

  • AD/DAC … △AKM AK4621EF CODEC(現在は不明。旭化成の火災の影響でESS社に変更の可能性有り)
  • オペアンプ … NJM4556A、NJM8065、NJM8068、NJM8080、OPA1678を各所に使用
  • キャパシタ … ◎日本製(Nichicon、Panasonic)3300μFの大型コンデンサを搭載
  • マイクプリアンプゲイン … 62dB
  • ループバック … ×
  • バランス出力 … ◎

AD/DAがワンチップのCODECを使用しているため性能的には劣っていて、ここが足かせになる可能性があります。
素性がよくないように感じますが、マイク入力のノイズもこの中で一番低く抑えられています。
さすが世界のスタジオで使われている業務用コンソールメーカーなだけあって、マイクプリアンプのアナログ回路設計に秘訣があるのかもしれません。

またマイク入力のLegacy 4Kモードは海外著名アーティストの収録に使用された有名なSL4000シリーズに寄せた音になるモードで、マイクプリアンプのいわゆるエンハンサー的なものに近く、これを使用するとクッキリと声が一段前に出るような効き方をします。好きな人にはハマるのではないかと思います。SSLの出音が好きな方も多いです。

ICチップの性能だけで聴いた感じの良さが決まるわけではないという事を感じさせてくれます。

また個人的にデザインがかっこいいと思います。

ただし、SSL2はループバックに対応していないため、必要な方はVoiceMeeter Banana等を使って別途設定が必要になります。

測定値

マイク入力に関する測定値です。
前述したMOTU M4のSINAD測定値はM2より良好だという事を頭に入れて見ると良いかもしれません。

ダイナミックレンジの広さはM2が良好です。M4であればもっと良いかもしれません。SSL2は少し低いですね。

SSL2のノイズの低さがわかります。M2に関しては-1.5程度の開きがありますが、今回測定されていないM4であればSSL2、iDシリーズと同等の測定値を期待できると思います。

まとめ

DACADCDNR [dB]THD+N [dB]
MOTU M2ES9026PRO
(5,058円)
ES9820Q
(857円)
DAC 124dB
ADC 116dB
DAC 110dB
ADC 108dB
MOTU M4ES9026PRO
(5,058円)
ES9840Q
(1,307円)
DAC 124dB
ADC 116dB
DAC 110dB
ADC 108dB
AUDIENT iD4mkIICS43199
(2,342円)
ES9822QPRO
(1,433円)
DAC 130dB
ADC 124dB
DAC 115dB
ADC 117dB
AUDIENT iD14mkIICS43199
(2,342円)
ES9842QPRO
(2,360円)
DAC 130dB
ADC 122dB
DAC 115dB
ADC 116dB
SSL SSL2AK4621EF
(999円)
DAC 115dB
ADC 115dB
DAC 100dB
ADC 102dB
SSL SSL2+AK4621EF
(999円)
DAC 115dB
ADC 115dB
DAC 100dB
ADC 102dB

部品構成を見る限り、MOTUは出力に力を入れていて一つ抜けていますね。
AUDIENTは入力に力を入れて、パーツのスペック上は最高値でバランスが良い構成だと思います。
SSLは安価な入出力統合チップで、他と比べて2段ランクが下がる感じがしますが、アナログ回路設計やLegacy 4Kなどで補っている印象です。


もちろんここの部品だけで決まりませんし、他の部品の質などもありますが、MOTUもAUDIENTも他にしわ寄せがきているような構成ではありませんでした。コンデンサも全て日本製でしっかりしています。

逆に回路設計でパーツ通りの性能を引き出せないこともあります。現にパーツのスペック上はAUDIENTが圧倒的でSSLは微妙な数値ですが、実機の測定値を見るとそうでもありません。

測定値を見るとM4がおそらくもっともよいバランスになるのではと思います。

主の結論

Audientの音が好きだったり、SSLのブランドやLegacy 4K機能の音作りが好きだったり、迷う3機種ではあります。

もしあなたが試聴なしでネット通販を使って入手する場合、スペック的にも入出力数にも隙のないMOTU M4 をおすすめします。

例えば「今回オーディオインターフェイスを購入したので次は単体のマイクプリアンプやミキサー、ヘッドホンアンプを買ってみよう」といった場合でも使い続けることができる拡張性がありますし、スペックやパーツの情報も多数出ているので安心できるという理由で選びました。

ちなみに主は現在MOTU M4を使用しているのですが、売れているのも納得のクオリティで満足しています。

拡張性を気にしなければ、YouTubeや実店舗で視聴して、音の傾向が気に入ればSSL2を選択するのもありですし、iDシリーズでも良いと思います。単体で使うのであればiDシリーズとSSL2は業務用コンソールのプリアンプ技術を取り入れているので僅差ですがMOTU Mシリーズより入力が良いのではないかと感じています。

どれも素晴らしい製品なので大差なく、購入しても失敗はないと思うので、現環境からワンランクアップさせたい方はぜひ試してみてください。

公称スペックや細かな機能などは島村楽器さんのサイトがおすすめです。
(採用部品が旧バージョンですので、最新の使用部品に関しては当サイトをご覧ください)

https://www.shimamura.co.jp/shop/nagoya/product/20210805/11724

またオーディオインターフェイスを使わず、高音質ADコンバーターを使った配信環境について記事にしているのでこちらも参考にしてみてください。